ミュージアムショップはメッセージ

タイトルは懐かしいマクルーハン「メディアはメッセージ」のもじり(のつもり)。鎌倉での1日はK氏が描いてくれたので、当日目標だった『藤牧義夫 生誕百年展』についてちょっと。
東京現代美術館1996で、思いも寄らぬ傑作『隅田川絵巻(仮題)』の描線に魅入られてから十五年を超えたことになる。それから、鎌倉近代美術館1998での再会を経て、いよいよ裏を返したわけだ。もうお馴染みさんと呼んで貰いたい素天堂だが、館内を一巡して、妙なわだかまりを強く感じて、何故か嬉しいより苛々する。「絵巻」の全体通しは嬉しい限りだったが、知っていたはずのあの絵やお気に入りのあの作品が展示されていない。
展示された藤牧作品の明るい都市への思い入れが、ここで書いた印象を全く筋違いだったように思わせ、鑑賞者の苛立ちを増幅させるのである。人付き合いも悪くないし、近代東京を積極的に評価するコメントなどが印刷物に付されているのがそれを感じさせる。じゃあ、あの情報はなんだったのか。
違和感(とはいってもいい意味のではあるが)を持ちながら、ミュージアムショップにはいると、資料として版画界の重鎮だった人物のいろいろな版画入門とか概説書が展示されていた。背を向けてカウンターの上を見ると今回の図録と並んで二冊の公刊本が並んでいる。一冊は巨大な黒い本で、誠に素っ気ない『藤牧義夫の眞僞』、もう一冊が『君は隅田川に消えたのか ――藤牧義夫と版画の虚実』と題されたノン・フィクションのようだ。しかし、自分のわだかまりを見透かすようにカウンターに置かれたそれらの本が、実は今回の展示の重要なテーマであった。展示にも、図録にも書けない事情を、その二冊が雄弁に語っていたのである。
二連休の後半、月曜日はやっと旧約の世界から離れて、自由な読書時間ができたので、PCで付録のDVDに収録された絵巻を当時のジャズをバックに再生しながら、当日買った、ノン・フィクションを終日読みふけった。
そのことに関してはまた後日。