円了、東銀座、ポオ講義

「存在の謎に挑む 哲学者井上円了」展。mixi仲間のHさんの記事を見て、さっそく丸の内行きのバスに乗った。呉服橋側の停留所で降りて、丸の内オアゾへ入る。丸善4Fがギャラリーで、文具売り場の奥だ。入口で思いもかけぬお土産を頂き、中をのぞくと左手に大判の錦絵が目に留まる。『小倉擬なぞらえ百人一首』に思わず引き込まれる。一番のお気に入りはこれだった。提灯のお化けがかわいい。国芳他の絵師による、遊び心たっぷりの絵解き百枚完揃い、その他に美しい奈良絵本の『徒然草』を始めとした国文関係の美麗本がいならぶ。素でもニヤニヤできる狂歌本をすぎ歌仙屏風までいって、順路を間違っていたのに気づき気を取り直して円了の生涯に向きあう。私学の重要性をユーモラスに語った書を観て少し感動だが、それ以降も、『凌雲閣十二層図』暁斎描く『上野勧業博覧会図』などなど民の文化への円了の目配りが楽しく、妖怪学まで一挙に、ゆっくりと鑑賞することができた。もちろん圧巻は妖怪関係の資料であって、絵入り木版本『山海経』、数種の『百鬼夜行図絵巻』を始めとする怪奇伝説の絵巻群には圧倒された。さらに『伽婢子』の和書や、『剪灯新話』『聊斎志異』の注釈本、芳年の艶麗な『新形三十六怪撰』完揃い、とにかく広くはない会場を埋め尽くした、日本人の求め続けた怪異への情熱を掬い上げた円了の業績に感動して、会場を後にした。
とはいえ、4F洋書売り場を素通りすることもできず、CD付きのバーゲンブックと中世関係の大部な画集を拾って階下へ向かった。入ってくるときには全く気づかなかった表の変化に驚いた。まるでオアゾ中欧のどこかの街に紛れ込んだかのような錯覚が現前したのだから。赤レンガのタマネギ形の塔屋がオアゾ、エントランスの硝子越しに見える。ふっと思い出した、前に丸ビル高層階から見下ろした東京駅の外観の改修が終わっていたのだった。

ちょっとどきどきしながら、八重洲へ抜けて東銀座の奥村書店へ、暫くぶりのご挨拶に伺う。結局二時間を越す長居の後で、頂き物をしまって最後の目的地へ向かった。丸ノ内線銀座から淡路町へ出て、小川町を通ってブックブラザーで寄り道という、いつもの順路で神保町に到着、翻訳講義のあとは、さくら水産で馬鹿話鱈腹。さすがに疲れた一日でありました。そんな中、雑誌『ダクダク』の新刊の話が出ていたのだが、今朝方、TLを弄っていたらこんな絵が、残念ながら当該頁で画像を検索できなかった「Duk-Duk」だったが、これも神のお導きなのだろうか。