旧約と新約との歴史的な転換点が、サロメの時代だった。

それはわかるが、しかし、歴史劇としてみるなどという必要がこの題材に必要なのか。しかも、最も重要なテーマである「つれなき美女」としてのサロメの残酷さは、影も形もなかった。
母の行状をあげつらい、けなすヨハネを憎み、母の命令で首伐られたヨハネの頭を見て失神するざまであり、だから父ヘロデ(チャールズ・ロートンの怪演)によって殺されることも無い。
ローマによって滅ぼされた父の国を離れ、晴れて相愛のクローディアス(オリジナルなキャラクターである)と、山上で熱く布教するJCのことばを群衆に紛れて聞くという、いかにもハリウッド的なエンディングの、真面目な振りをしたお馬鹿映画であった。
それにしても、尖った悪女の似合うリタには、背徳的で残酷な処女は似合わず、扇情的な七枚のヴェール・ダンスは、出来損ないのストリップ・ティーズでしかない。