チョイ古神戸逍遙01

K氏がお父さんの法事に帰郷するということで、相乗りして三連休がらみで神戸近辺の未見の洋館と古書店巡りを敢行してきた。
まず初日九日は、「阪急梅田古書の街」初体験。十軒あまりの個性的な古本屋さんが集まった本好きにはたまらない施設だが、入り口の数軒ではあまり心に響くブツはない。しっかりした値付けと専門書が多く、半端な素天堂の空振りなのかと思ったが、半分過ぎた杉本梁江堂さんで『人形劇の研究』南江二郎と遭遇した。人形劇の総合的な研究所の嚆矢であり、『黒死館』にとっても重要な参考文献となるものだと思う。法事のあとで、春節に賑わう元町の中華屋さんで実家の皆さんと会食しました。


翌十日、同窓会の予定が入っていたK氏は午後一杯拘束されているので、朝のうちに隣町の王子公園にある、旧関西学院のチャペルだった「神戸文学館」を見学に行った。一時期は仮設施設だったらしいが、二、三年前に外構の整備を行い清教系の貴重な礼拝所が復元されたということだ。
 そこで、右左に別れて、自分は六甲ケーブルで、TLで知ったムットーニさんの個展「INTERVAL WINGS」を見に、六甲オルゴールミュージアムへ。
関西モダンな山上駅舎
いろいろあって到着がちょっと遅れたが、今日はムットーニさん自身のレクチャーつきで、13:30からの第二回開始には間に合う。時間があったので館内のシュトラウス・カフェで軽い食事をする。館内の充実したコレクションを散策していて気が付いたのは、こういう施設で陥る機械だけのコレクションに陥らず、きちんと、ソフトの蒐集をつづけていられること。その裏付けがあるから、常時行われているコンサートが充実しているのだろう。13;00からの定時コンサートでは「フォノリスト・ヴィオリーナ」で奏でられた『ハンガリアン舞曲』に身体を揺らせて、お母さんの膝の上で大喜びする幼女の後ろ姿と、サーカス衣装のままペンをとる「エクリヴァン」というピエロ人形(上記リンク先を参照)が圧巻だった。

お目当ての個展は三階の特設スペースで行われており、ご本人の朗読とレクチャーは、その小さな部屋でということで、十五人の催行人員でも入りきれない位。その最前列でムットーニ氏の息づかいさえ感じられるイヴェントであった。最新作二点を含む六点に対する制作秘話を含めた解説は三十分を経過して話したりない気配さえ感じられる充実ぶりであった。動作の地味な作品ほど、機巧に工夫を要し複雑になるという談話は貴重だった。またNHKの番組がらみで作成した、ジョルジョーネの『テンペスタ』をそのまま三次元フィギュアに変換する工程の苦心談は圧巻だった。ルネサンス風の平面透視図のからくりが実は、二次元で立体を感じさせる錯覚を応用した作業であることを、再確認できたという発言は、実際に手作りで立体造形に携わる方の重要な証言だった。
十四時の定時を過ぎて終了したため、次の定時コンサートには間に合わず館内を一巡していたら、案内の担当者に館内最大の自動演奏装置、世界最大級の1938年製Decap Dance Organ "De Kempenaer"だということで、途中でコンサートに入場した。その会のエンディングが、ダンス・ホールでの演奏が主たる用途だった同機の演奏は迫力満点で、素晴らしいものだった。
 上演中
山上にある人工スキー場への渋滞で、バスの時間が遅れているというので、駅からオルゴールミュージアムまで歩いて山上を一周してしまったが、幸い、好天に恵まれ行きも帰りもバスに抜かれることになったが、充実した一日であった。モダン建築風味一杯の山上駅を下って阪急六甲駅近所の口笛文庫で古本空気に触れて休息。K氏と待ち合わせて三宮駅前から「千人代官 酒居」さんちか味ののれん街で、一杯付きの夕飯。美味しい魚で大満足。