お久しぶりの南部古書会館 第三十四回本の散歩展から

大阪の荷も解いていないのに、今日は五反田へ出張。どうしても気になる出展品があったので。日記を調べてみたらほぼ二年ぶりのことだったが、やっぱり、南部ガレージの底力、またもや十冊近くが手に貼り付いてきた。
中世関係の資料、メレジュコフスキーの『神々の死』米山正夫訳、新潮社大正本、イリフ、ペトロフのコンビ『黄金の仔牛』中公版、ETC。
何より驚いたのは『幻想文学 第二号ケルト幻想特集』。これは大ラッキーだった。矢野峰人井村君江を始めとした当時としては最高の執筆陣、フィオナ・マクラウド松村みね子訳『かなしき女王』から作品の復刻がすばらしい。今でも最高の水準といっていいだろう。巻中に収められた、お得意のブックガイドの貧弱さからは、当時の日本におけるケルト認識の低さが推測できる(自分自身どれだけ悩まされたことか)悲しい見本である。末尾に書かれたペンギンの本など(今でも手元にある)、見ていると涙が出そうだ。
こんな感想も今だからこそ、客観的に書けもするが、この当時こういう作業をしてくれる「幻想文学」の同人にどれだけ励まされたことか。銀座の近藤書店や旭屋書店、なにより改造社銀座店など、マイナー雑誌をきちんと置いてくれる本屋を巡りつつ、遅れ気味の発行を毎回楽しみにしていたのだ。旧編集者の方々とは、今でこそあちこちのイヴェントで親しく謦咳に接することはできるが、まさかその頃は直にお目もじなど叶うはずもないと思っていたのだった。何ともうれしい雑誌との再会であった。