空飛ぶツィプリアンの伝説

字幕のない全く未知の言語でも、演出さえよければ話は通じる。そんなことを実感させる映画だった。十八世紀とは言え、東欧の田舎の暮らしの凄まじさと、荒っぽい生活。対する修道院という、並行して存在する異なる文化の世界。そこに投げ込まれた男の奇妙な一生。一言で言えばそれで終わりだけれども、美しい画面と、俳優の演技で、言葉は分からなくとも、少なくとも大きなストーリーの流れで、それ以上の感動は受けることができる。

荒くれた暮らしから、偶然入りこんだ宗教的な暮らしの中で、自らの過去を振り替えざるを得ない男の壮絶な生涯は、それを取り巻く修道士たちの知性と豊かな個性によって救済され、一人二人と消えていった仲間たちを見とるかのように、修道院の最後で終わる。レオナルドの飛行機械に対する強い興味は、彼の中で起こった、至上への憧れなのかもしれない。吹雪にふくらむパラシュート状のものが、彼をどこへ連れて行ったかは明かされることはないが、少なくとも彼の魂だけは吹雪の中を天高く上がっていったのは間違いないだろう。