2005-01-01から1年間の記事一覧

白き日旅立てば不死 荒巻義雄 早川書房 1972

30年ぶりの再読だったが、以前PUHIPUHIさんご指摘の、この作品における重要なベースであった、サド「美徳の不幸」がらみの設定を全く意識の外に置いてきていたのにちょっと驚く。 西洋におけるエロティックな美術や文学は嫌いではない。と云うより割合積極…

禁じられたのは、恋だったのだろうか。

「禁じられた恋の島」エルザ・モランテ 大久保昭男訳 世界文学全集“グリーン版”Ⅲ−18 河出書房 1965 主人公の少年が自意識に目覚めて、幼年期の自分の分身でもあった島を出、あとになってから少年にとっての恋というものが、その少女との感情の起伏そのもので…

恋の島は夢の島? 「禁じられた恋の島」エルザ・モランテ 大久保昭男訳 

世界文学全集“グリーン版”Ⅲ−18 河出書房 1965 戦後の'50年代を過ぎた頃から暫く、文学全集が出版社の収益を支えたことがあった。揃えることで知的満足感を得るという、安易なスノビズムがその収益をもたらした時代で、講談社、新潮社の大手から集英社、筑…

デュシャン展の1日

http://www.yma.city.yokohama.jp/kikaku/duchamp/ 所用のため外出していたKさんと、横浜駅で待ち合わせ。東急線の歴史的改修は終わったが、そのほかの駅全体の工事はまだまだ進行中。JR桜木町駅からおきまりの動く歩道で、ランドマークタワー経由で横浜…

緑なすこの蓬莱は、緑なす彼のエールの地か

「蓬莱」 皆川正禧 伝奇の匣8ゴシック名訳集成 暴夜アラビア幻想譚 学研 東雅夫編 ISBN:4059003360 師小泉八雲の死にあたって、門下生皆川正禧が、究極の美文でかの人の来し方をつづったもの。始皇帝が探し求めた不老不死の国“蓬莱”をわが日本に見立てたそれ…

愛の時にかえる呪文「メアリー・アンセル」 「怪奇礼讃」ISBN:4488555020

アンソロジーの醍醐味といえば、選択の視点の妙と、構成を味わうものだが、もうひとつ、モノグラフでは見つけられない作品にめぐり逢えることだろう。この作品集は昨年の夏評判になったものなので、例によって今更なのだが、やっと今頃読み始めた。編訳者の…

薔薇十字に輝く日々 「夕暮の階調」 塚本邦雄 人文書院1971刊 本阿弥書店再刊1988 

ASIN:4893730126再会は、十数年と云うより、二十数年ぶりかも知れない。 この人生で本もそこそこ買ったが、売った回数も先年の引っ越しによる大整理をはじめとして、限りない。不要本の整理と云うより、本を売って本を買うような暮らしを数十年続けてきた。…

表現派の幻想 伯林白昼夢 フリードリッヒ・フレクサ エディション・プヒプヒ刊

http://d.hatena.ne.jp/puhipuhi/20041231#p1 街の魔力、というものがあります。歩きなれた街のある路地を曲がった瞬間、そこが自分の知らない場所であるような錯覚を持たされたり、逆に、知らない異国の街を歩いていて、突然そこが自分にとって、既知の場所…

犯罪科學別巻 異状風俗資料研究號 四六倍版 武侠社 昭和6年刊

高かろうと思って探しもしなかったこんな本に巡り会えた。 新潮社刊「現代猟奇尖端図鑑」とともに、エロ・グロ・ナンセンス華やかなりし頃の、ある意味到達点か。「猟奇…」が現代風俗の集大成なら、こちらはあくまでも学究的?なエッセイの集大成ともいえよ…