2009-01-01から1年間の記事一覧

栗本薫さんで思い出したこと

もう三十年を越した大昔。1976年『LaLa』という少女雑誌が創刊した。当時はまだ、個人的には『りぼんDX』で、陸奥A子などを読み始めた時代で、手探りで『花とゆめ』本誌連載の山岸凉子『妖精王』や総集編が出た『メタモルフォシス伝』などを細々と読んでいた…

『イタリアの寺』を読む

板垣鷹穂という名前に出会ったのは、七十年代の初頭、当時でも比較的入手しやすかった、レオナルドについての文献『レオナルド・ダ・ヴインチの創造的精神』 六興商会出版部 1942からだったと思う。その後集めづらいとは言いつつ何冊かの旧著に出会った。今…

『世界最古のもの』ヴィリ・ザイデル bibliotheca puhipuhi Nr.9

文学フリマから三週間。やっと、この本を読めた。冊子とはいえ百三十ページを超すボリュームである。 以下のように、何とも、ぎこちない感想になってしまったが、実際の作品はずっと滑らかで、最後の終焉まで引き込まれていく。さすが、ビブリオテカプヒプヒ…

事件氷解

午前中届いた『水玉生活』たくさんのおまけが付いて、無茶苦茶お徳用だが、素天堂にとっての重大事は、上記の件。で恐る恐るページをめくると、あった、あった。68p「うたげのアト ポルシェで壁画!」が、それであった。ウーン、やっぱり名エピソードである…

濡れ衣だった! 『大阪豆ゴハン』〈幻の六甲ドライブウェイ・エピソード〉削除事件

大阪豆ゴハン(3) (講談社漫画文庫)作者: サライイネス出版社/メーカー: 講談社発売日: 2003/02/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (26件) を見るワイド版のコミックスも出れば買って、全巻持っていたしするから、前半の三巻が…

小さな絵

このところ出物の多いK文庫から、久しぶりに絵を買いました。版画です。壁はないし、出来るだけ本以外は買わないようにしていたのだが、“TROIS EGLISES. EAUX-FORTES ORIGINALES DE CH. JOUAS” ユイスマンスのもう一つの顔が見えるエッセイ、『三つの教会と…

大広間で二十年ぶりの再会〈クリスピン〉 極私的MYSCON10報告

八時半ぎりぎりまで作業だったので、到着できたのが九時半。入館前に食事でもと思ったが、本三到着が九時過ぎで目当ての店は閉店。弁当を買い込み、「後、二人」と話しているNさんに会費を払って入館する。当然ながら、すでに個別企画が各部屋で始まってし…

バレエ・リュスの新しい世紀

シャトレ座でディアギレフがパリっ子の度肝を抜いてから、もう、百年たってしまったそうだ。そんな日にネット上で途轍もない連載が始まった。『バレエ・リュスと日本人たち Ballets Russes et les japonais 』、素天堂が敬愛する数少ない書店の一つである、…

その日でなかった

○○もかねやすまでは江戸のうち、だとか。元は川柳だそうだが、小さかった江戸の境界を逆手に取った名キャッチフレーズである。 その真下にある駅は、アカデミズムと縁のない素天堂にとっては、年一回のイヴェントで使うだけの駅である。そのイヴェントのため…

初参加 「第八回文学フリマ」

早起きは、老境に近い人間の特権だ。無駄に起きた時間を埋めようと日記を書き、K氏がほとんど終わらせてくれた準備をもう少し補充したりで、出発時間になった。下調べしていた時間通りの住吉出発。京浜急行は初めての、K氏の反応が楽しい。とはいえ知ってい…

文学フリマ直前 当日雑感

K氏作成POP 〈一箱古本市〉盛況の、興奮も冷めぬ本日、京浜蒲田での大イヴェントである。 今を去る四十年位前に、この地図の範囲で一年程暮らし、古本初心者だった素天堂には思い出深い土地である。当時から素天堂の読書生活を支えてくれた梅屋敷の新刊書店…

江東春三景 あんまり昨日の虹が見事だったので

仙台堀川公園の鷺 木場公園の花・道端の花 連絡橋から見下ろす並木 赤いハナミズキ リラの花咲く頃 江東区道端の花No.1罌粟 昨日の虹2009.05.08

悪徳の種子をまく 五月四日〈LIBRE TONSURE〉の記録

もうすでに箱詰めはすんでいるものの、この重い段ボールをカートに積まなければならない。朝一の苦行は、出店者それぞれ、皆様共通の悩みだろうと思う。その苦行はこれからの楽しい一日を過ごすための必須事項でもある。表通りまでの僅かな道で崩れ始めるカ…

まだ買っている

六畳の壁半分を占める棚に二重に並ぶ、VHSのセル・ヴィデオと録画テープ、もっと悲惨なのは、スペース削減を理由に使い始めた8ミリヴィデオの山。既に8ミリヴィデオの機器は四、五年前に生産中止。DVDやPCへの移行も考慮したが、動画データの巨大さには、…

一箱古本市2009 5月4日 根津教会 LIBRE TONSURE 出品目録

★文庫★ 薔薇の女 笠井潔 創元推理 50 文豪ディケンズと倒錯の館 新潮 50 丘の上の出会い アンヌ・フィリップ 福武 50 ジョウーシキ一本釣り 玖保キリコ 角川 50 ナージャとミエーレ 山口椿 祥伝 50 美食倶楽部殺人事件 嵯峨島昭 光文 50 にわとりのジョナサ…

高円寺で実証、実行

2009-04-23 - 素天堂拾遺ここで書いた、買う側の心理。昨日の高円寺、西部古書会館の「雑本市」で満喫してきました。知らない本、見たい本が嬉しい値段でいっぱい買えました。周辺の本屋さんも個性があって、波長が合いすぎるお店での反応も楽しんだり、違い…

ウィリアム・テルが序曲だった

全編をうがいのリードで終始する、空前絶後の音楽ギャグ『ウィリアム・テル序曲』が、アメリカのバンド「SPIKE JONES & CITY SLICKERS」によって演奏され、日本のジャズマン、フランキー堺率いる「シティ・スリッカーズ」がそのスタイルをコピーする。 彼の…

本を買う心理vs本を売る心理

長い間、本は買うものであって、自分が本を売ることはなかった。いっぱい買える本屋さんがいい本屋さんだった。自分が欲しい本が何時いってもあって、あれもこれも沢山買えるとニコニコして出てこられるお店があれば幸だと思っていた。ところが、買う側の心…

ディアギレフのフラメンコ

先日の矢代幸雄『太陽を慕ふ者』角川書店1950の感想で、わざと書かなかったことがあった。 それは、きっと書けば長くなるし、資料も参照し直さなければならないし、というわけだった。 実際John Percivalの簡明な評伝『The World of DIAGILEV』やセゾン美術…

嘲笑と赤っ恥

いつも、〈はてな〉のリンクリストを楽しみにしている。思いもつかない言葉探しや、自分の古い発言を掘り出してくれるから。今回も、大昔の同人誌『ルナジュモン』を検索して、当日記にきて下さった方がいたりした。 昨日、帰宅していつものようにPCを立ち上…

重い腰

〈文学〉というちょっと重い語感に尻込みしていた素天堂でしたが、K氏の督励で同人イヴェントの大手「文学フリマ」に今回初めて応募してみました。初回申込にもかかわらず、イヴェントに参加させていたけるようになりましたのでご報告いたします。 2009年 5…

日の當つた哲学

このところ、何となく鬱状態のなかで、最近手に入った大正期の美術本に漫然と眼を通す。 戦後の復刊だが矢代幸雄『太陽を慕ふ者』角川書店1950。先日取り上げた森口多里とは正反対のアカデミックな美術史の大御所である。立場こそ違え、いわば、我々はこの人…

春のおこぼれ

山風も去り、先週までの冬並みの気温から一挙に初夏まで来てしまった感の、今日この頃。ギリギリまでつぼみだった花々も一斉に咲き狂っている。近辺の桜も一挙に葉桜である。何をするわけではないが、若干寂しい。 そんな今朝、外気より寒い自宅を出てゴミ捨…

むべ山風を……

獅子文六の戦後の佳作が『嵐といふらむ』だ。戦後すぐの公職追放を自ら戯画化した作品『てんやわんや』で息を吹き返し、良質の風俗小説で戦後を描き続けた彼が、戦後廃止になった華族制を戯画的に取り上げた作品である。 虫太郎が恐怖を覚えたくらい、戦前初…

〈Out of Time〉時間旅行者の孤独

良い古本屋さんが思いがけない本をリストに忍ばせたのを見つけたりすることがある。そんな時、この本屋さんはもしかするとお店の番台の奥に、小さなタイムマシンを常備していて、夜な夜なだか、週一だかにその時代にいってその本をこっそりこっちの世界に持…

知恵熱でダウン

六、七年ぶりで大風邪を引いた。金曜日にですぺら。昨日は川崎市民ミュージアムで、「粟津潔展」その後は、K氏とは初めての素天堂幼少期に過ごした、溝の口訪問と、日記のネタには困らないはずなのだが、半蔵門線を降り、自宅へ歩き始めた途端、強烈な寒気が…

地の利を生かして

十三日の金曜日夕、不吉な日柄をものともせず、職場の近所ということもあって、家にいたK氏と「深川いっぷく」を覗いてみた。 あまり大きくないスペースを最大限に活用しているせいもあるが、翌日の「いっぱこ古本市」の準備で大わらわ、奥のブースにある目…

コーエンはこれでおしまい

友人から最近、地元の県紙に載ったという記事の紹介があった。ユダヤ・ジョークのあまり出来のよくないものの引用なのだが、イスラエル・コーエンという〈固有名詞〉がどう使われたかという顕著な見本として全文を画像として引用する。 岐阜新聞2007.03.07 …

もう一つ意外なところから

K氏が見つけたジョン・ディーの評伝を覗いていたらTIMON COCCIUS, BREMEN, 1589という名前が飛び込んできた。これはもしや〈コクチウス〉と読みはしないか。早速検索にかけてみると、勿論TIMONではヒットしなかったが、COCCIUSで大当たり。 所で、眼科に使う…

逆遠近法という考え方

(錬金術や占星術などは)いかさま詐術か、さもなければ、誤った科学(「疑似科学」もしくはpseudo-science)であることになってしまう。そして、そうしたものをはびこらせた中世の「非科学的」な思想性が、厳しく問われもする。自然選書版172p 現在の科学思…