2009-01-01から1年間の記事一覧

雑誌の魅力 新青年の残香(四)ハヤカワミステリマガジン 1967 5月号

小学校時代から読み始めていた『SFマガジン』や、他社の『ヒッチコック・マガジン』『宝石』に比べて、『EQMM』はコラムも大人向けで中学生にはハードルが高かった。もう一社からでていた『マンハント』は、中学生にありがちな、ちょっと違った興味で古本買…

時とところのアラベスク 三

先月、年に一度の映画館の帰り、気まぐれで木場から門仲へ足を延ばした。永代通沿いの喫茶店で、久方ぶりに、氷水を飲んででこめかみをキリキリさせた。お目当てだった古書店も休みだったし、帰宅しようと富岡八幡宮裏へ回ったら、境内で骨董市の開催中だっ…

0930  附記

多分、一生に一度の機会だと思う。 新築(といっても、今年でもう七年目だそうだ。)の「丸ビル」オフィスエリアへの入場が許された。最上階に近い高層部から外を見る貴重な機会だった。上記の、最後に残っていたはずの二件のうちの一つ、東京駅を見下ろした…

時とところのアラベスク 二

石造りであろうと、コンクリート造りであろうと、木と紙のイエで暮らしてきた日本人は、建て替えにまったく抵抗がなかったし、様式史を持たずにきた我々にとっては、古いものは不便なものでしかなかった。昔が見たければ、変色した一枚の写真があれば十分だ…

時とところのアラベスク

切っ掛けは、東京メトロニュースの今月号の表紙だった。 いつものようにモデルさんが、お店でくつろぐ絵柄なのだが、彼女の背後に目がいった。正確には背後の書棚の二段目、奇妙な顔が見える。その顔に赤い文字でdadaの文字が見える。これが、京橋にあった近…

蝋燭の燈では勿論なかった

藤原編集室の告知で知った〈ミステリー文学資料館開館10周年記念 トーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」に、早速応募した。この施設は、いままで、日下三蔵さんや山前譲さんのお仕事で名前は存じていたが、畏れ多くて敬遠していた。イヴェントの当…

凡愚と選良 長い夏休みを終えて

五年半を越える逼塞状況を堪えられず、足抜けをして得た、一ヶ月の長い休み。形容は悪いが瓢箪から駒で、お店の手伝いをすることになった。結果、約三週間を店主と相対することになった。 今までも少しずつ聞いたことがあったが、折角の機会でもあり、店主の…

ある絵巻

不思議な絵巻を見たことがある。それは聖者伝でもなく、古典を絵解きした絢爛なものでもなかった。周りを囲む作品群は、〈エロ・グロ・ナンセンス〉の真っ只中、狂騒感さえ感じられる華やかな色彩の乱舞だったのに、そこだけは、淡々として、静かな墨一色の…

堀大司に再会する

この人の名前と初めて遭遇したのは、不思議な全集『世界人生論全集第4巻』サー・トマス・ブラウン『医師の宗教』筑摩書房1964だった。今では復刊さえも望めそうにない全集名だが、抄訳が含まれるにしても、この全集でなければ読めない作品が犇めく、日本で…

単純に騙される快感

K氏に誘われて、東急古書市に行ってきました。勤務先でのアクシデントで、K氏が午前中は出勤したため、予定から大分遅れたものの、二時過ぎには会場に到着。そのまま五時まで三時間。古書の山と格闘してきました。昨年も発狂したのですが、今年はそれに及…

追加お知らせ

前日記事中の新刊を、プヒプヒさんのご厚意で数部お預かりいたします。 シェーアバルトの短編『反乱の力』A6版12ページ中綴じ、シェーアバルトによるイラストが入ります。 通販リストには載せませんので、ご希望の方は通販フォーマット備考欄に書き込んでお…

a Summer in Japan コミックマーケット76

日本の夏である。もう一つの風物東京湾大華火祭は、先週片づき、今週は、コミケ76が夏独り占めであった、と思う。若干寝過ごしはしたが、大過なく入場。今回は、このところお隣が多かった「探偵小説研究会」サークルとも離れ、不思議な空間を醸していた「黒…

久々の午前様

カウンターの中から見るお店はなかなか新鮮だった。どうやら、コミックマーケットへの準備も整ったので、少しでもお手伝いできればと、昨日から出かけている。幸い、懸念したような無駄話の時間もなく、いろいろなウィスキー銘柄の飛び交う、上級者たちの会…

三十年ぶり

大昔バイトで二年ほどカウンターに入っていた。その後、野暮仕事ばかりですっかりその道から外れていた。あそびで幾度かは入ったが、カウンターの中での仕事は久し振り。却って迷惑でなければと思いつつ、結構ドキドキしている。グラスの洗い方か……。六十の…

想い出を引き出すMedium

今更だが、東雅夫さんの近著『怪談文芸ハンドブック』を読むことができた。既にこの本の評価はネット上でも数々あげられており、素天堂の如きが屋上屋を過重ねる愚を犯す必要もないはずだが、どうしても書いておきたいことがある。というのは、この本には素…

伊東忠太に逢う

リハビリと称してほとんど毎日出かけている。月曜日、お使いのお手伝いを兼ねて百人町へ出かけた。自家用車で錦糸町へでて、駅前に置いて総武緩行線に乗るいつものコースのつもりだった。ところが、御用をすませて錦糸町へ戻り、おいしいお昼の後で例のとこ…

出来上がってくれば、可愛い

泣き言を並べながらも、入稿すれば新刊は出来てくる。出来上がってしまえば、それは苦労の結晶である。筆者の能力云々はどこぞに吹き飛んで、レイアウトや差し込んだイラストの上がりに一喜一憂する。何がよかったのか、今回は満載の挿入図版が、欲目かもし…

星から還って

素天堂の〈幻の海外旅行〉に付き添っていてくれたK氏が、しばらくの間、小さな星へ旅していた。何でもパラス星というその星は、フラムスチードの星図には載っていない新しい星だということだ。還って来るなりパラス星の素晴らしさを力説するK氏は、素の理解…

初めてのお使い@百人町

解放された土曜日初日、言いつかったお使いがてら、Bunkamuraでも行ってこようか。起きても間が持てなく、妙に早く家を出る。総武線もまだそれほど込んでいない。大久保の駅から、聞かされていた、高架沿いの細い路地を抜けて、頼まれた御用はテキパキと終わ…

Time Outもう一つ

七月三十一日。もう一つ時間切れが起こる。このblogをはじめてからついた、ある職場を本日離れる。この五年間いろいろなことが起きた。まさかと思った世帯さえ持て、しかも、一生分甘やかされてここまでこられた。勤務時間中に、一日一冊本が読めるという、…

Time out かOut of Timeか

いつか書こうと思っていたこの本“Out of Time”。オールド・タイム空想科学小説での挿絵による〈未来デザイン集〉。宇宙船やロケット、未来自動車のデザインなど、妙に微笑ましい。今最も売れている車、トヨタのプリウスの原案は素天堂、一目見て分かった。手…

毎度、修羅場の収穫

お陰様で、新刊の作業も佳境に入って眼のチカチカする日々である。しかも職業上の大変化と結びついて、どっちも大騒ぎ。そんな中、またもや意外な大収穫が。一つは暁斎検索で釣り上げた和洋幻想絵画の大データベース。まるで〈国書〉と〈リブロ・ポート〉が…

コビトノ センセイ

ワタシヲ ヲシヘテクレテヰル チヒサナチヒサナセンセイハ オホシノセカイデ アソンデル トキドキモドツテ キマスカラ ベンキヤウ ヲシヘテモラヒマス チヒサナセンセイ ゴキゲンナラバ ワタシノオカタデ ウタヒマス チヒサナセンセイ オコツタラ ワタシノオ…

地図を描く

第九号で、やっと念願の地誌に挑戦できた。地名三昧というわけだが、知らない人にわかってもらうためには地図が必要である。お誂えの既製品があればそれに越したことはないが、内容によっては自分で再構成する必要がある。昭和初期の首都圏南部における私鉄…

自戒を籠めて 只今ノロノロ進行中

毎度毎度ジカイを籠めている。ジカイジカイは結構だが、今回の進行や前回の教訓は生きていないのか、ということである。そんなわけで、K氏よりこのようなお叱りを頂いている。 校正の内容はお見せできない程で、とにかく、夏のあの日に向けて、鋭意に近く進…

例えば蛙の足の食べ方とか……

『ボマルツォ公の回想』がいつの間にか、ゴキちゃんの潰し方になったり、あずまひでおといしかわじゅんの足の問題とか、『ポーの一族』は、連載中、いかに人気がなかったかとか。言うに事欠いてムヒカ・ライネスの豪華な〈手すさびのネタ〉の話とか、人生に…

小人のつぎは巨人

他愛もない日記だが、書き散らしていくと、それなりに読者の方が覗きにきてくださる。なんと、『未来のイヴ』のキャラを名乗るアダリーさんまでが読者になられた。光栄である。そんなことがわかるのも、はてなの機能、〈リンクの解析〉である。先日書いた「…

靴屋の小人さん

Kupfernickel (悪魔の銅)がニッケルNiの語源というのは、先日の日記でもちょっと書いた。Wikiの元素表のお隣、元素記号Coの元素はもっとストレートだ。Wikiの記載から引用すると コバルトという名称と元素記号は、ドイツ語で地の妖精を意味するコーボルト…

始動 コミックマーケット76

今回も参加してよいとの天の声が降りた。 八回連続の参加である。Pさんによれば、最近はこのジャンルの競争率が下がり気味だそうだが、それだけではないような気がする。それにしても新刊は第九号である。よく続いたものだと思うが、何、ネタの下敷きが豊富…

図録を読みふける

K氏の紹介で最近目を通していたこちらの記事からさそわれて、遂に注文してしまった一連の宇都宮「栃木県立美術館」の図録、一昨日届いた。「国立近代美術館1982-83」での衝撃の出会い以来、久しぶりのデルヴィル「オルフェの死」が表紙の『ベルギー象徴派の…